GH60ケース互換日本語配列キーボード基板「JP60」の興味調査
先日訳あり版としてv1をBoothに出しましたが、改めて興味調査(Interest Check,IC)を実施したいと思います。
フォームはこちら。欲しいと思う方、「ここが変わったら欲しいのにな」と思う方は回答いただけるとうれしいです。2020/08/31を締めきり予定としています。
実施するにあたって、前提の話がありますのでそれをここに書こうと思います。
JP60の概要
JP60は2020年現在の普及配列である、日本語108キーボード*1の60%サイズのキーボード基板として設計しました。 108キーボードのテンキー、カーソルキー領域、ファンクションキー列を削除したような配列が60%配列です。
現在まで、すでに絶版品であるDuckyの60%キーボード程度しか60%の日本語配列キーボードはありませんでした。 私が英語配列を使う気があまりないことと、特に誰も準備していなさそうなこと、そしてどうせやるなら親指いい感じしたいよねということでJP60を設計しました。
特徴は以下の通りです。
- Majestouch/Archissの交換キーキャップを使って定番配列が組める
- 親指に4.5uスペースキーの代わりに1u 4キーを割り当てられる
- 私は左から Delete Space Enter Backspaceを割り当てています
- Deleteが左手で押せるのが一番便利です
keyboard layout editorによるレイアウトは以下。
www.keyboard-layout-editor.com
課題
課題としては2点です。
- キーキャップ
- スタビライザ
キーキャップ
基本的に、販売されているキーキャップセットで揃えられるように設計をしないと、無刻印キーキャップを交えてそろえる必要が発生してしまいます。 幸い、国内でもArchisiteとDiatecがそれぞれのキーボード向けの交換用キーキャップセットを出していて、通販で容易に手に入ります。 これらであれば最低限の記号等は刻印と入力が一致しますので、移行も容易です。
二つ目の選択肢としては、ISO Enter及びHHKB layout向けの右Shiftが含まれていて、かつ最下行の1.25uや1uのキーキャップが多く含まれているキーキャップセットを購入することです。 主にGMKのような高めのキーキャップセットが該当します。GMKであれば多くの物理配列をサポートするオプションが多く存在しています。
三つ目の選択肢としては、DSAやXDAといった、行の区別のないキーキャップセットを使うことです。無刻印のものをうまく使うことで大体の物理配列は網羅することができます。
スタビライザ
3つ提示しましたが、このうちArchisiteとDiatecが採用している4.5uサイズのスペースキーは後者二つには存在しません。 また、国内にしか存在していないことから、キットで使われるスタビライザーには4.5u向けのものはありません。
そのため選択肢として以下の二つが発生します。
- 4.5u向けスタビライザーワイヤーを制作する
- 4.5uキーを使わない
v1では、4.5uキーと1uキー4つのいずれかを配置できるようにしました。プレートもそれぞれ用を用意しました。 また、私が真鍮線を曲げた4.5u向けスタビライザーワイヤーを付属しています。
親指に関して
planck, Ergodoxなどと同様、親指が押せるキーを増やして入力を快適にすることを提案しています。
具体的には2つの役目があります
- よく使うけれど微妙に遠いキーを配置する
- レイヤー切り替えキーとして使う
長押ししたときはレイヤー切り替え、短く押したときはスペースキーというような動作も可能です。
私の場合は左手側の2キーがDelete, Space、右手側の2キーがEnter, BackSpaceとなっています。 これは大体どのキーボードでも左手の親指で、2キー目の位置しか叩いていなかったからです。もうちょっと叩く範囲が広かったりずれている方はほかのキーに/にもSpaceキーをアサインするとよいでしょう。 そして、最近ショートカットキーとして割り当てられることが多いDeleteキーが左手にあるということが私にはすごくうれしいです。何故ならば、右手にマウスを持っている場合に、右手でオブジェクトを選択肢して、手元を見ながら左手で右端にあるDeleteキーを押すということをしなくてもよいからです。
矢印キー
60%配列に矢印を埋め込む場合、右シフトの1.75uが曲者です。2u以上のキーでないと二つのキーには分割できません*2。
左シフトを2.25uから2u(テンキーの0)に変更して、Z行をすべて0.25u左でずらすと、右側の空間が1.75uから2uになるので1u x2にできます。 これは、通常の配列とソケットで両立させることは難しいので、はんだ付け基板のみになる見込みです。
参考までに、Majestouchキーキャップセットのみで取りうる配列を用意しましたのでご覧ください。 親指をすべて1uにするには1キー足りませんでした。もうちょっと何かやりかたがあるかもしれません。
www.keyboard-layout-editor.com
また、最近の流行としては、スペースキーをレイヤーシフトキー兼用とすることがあります*3。いわゆるFnキーと同様でスペースキーを長押ししている間は数字キーをFn(nは1から12までの整数)として扱うような機能です。 フルキーボードから削られてしまったようなキーは、この方法を使って別レイヤーに押し込みます。
別レイヤーでは例えばvi/vimスタイルのHJKLで←↓↑→の移動や、ゲームでよくあるWASDもしくはESDF,ASDFといったキーにカーソルキーを割り当てることができます。 慣れるまでは思った通りに移動することができずもどかしいですが、練習をして慣れるとホームポジションのままカーソルの移動ができるようになるので、独立カーソルキーよりも便利になります。
興味調査のフォーム
基本的には自分用には今回と同じ構成で特に修正はいらないのではないか、と考えています。
どんな構成なら欲しいのか、こんなことはできないの?などご意見ください!2020/08/31を締めきり予定としています。
回答数を製造数の目安にするので、ほしい!って人は回答していただくようお願いいたします*4。
販売開始は10月半ば~11月予定です。
待ちきれない人向け
ミスがあったので手で修正していますが、それ以外はキーボードとして正常に動作する基板です。販売予定額よりちょっと安くしてます。 買っていただけると予算に余裕ができるのでうれしいです。
余談
これまで散々配列研究をしてきた結果、「現在の普及配列をJISと呼ぶのはよくないのではないか」という気持ちが強くなったため、原則「日本語配列」「JP配列」などの言いかえをするようにしています。 いくらかのメーカーのキーボードを見たところ、Appleとバッファローの一部を除いて、108が主流になって以降はJIS配列ではなく日本語配列、型番でもJPなどとなっています。
論拠としては、2020年現在の普及配列はOADG109Aから右ウィンドウズキーを削除した108キーの配列です。これがJIS配列と呼称されることがある配列です。
雑におさらいをすると、以下の要件を満たすものを日本語配列とするケースが多いです。
- ISO同様の拡張キーがバックスペースの左に一つある
- EnterキーがISO Enterである
- 日本語配列独自の拡張キーがスペースキーの左に2個ある
- 日本語配列独自の拡張キーがスペースキーの右に2個ある
- 日本語配列独自の拡張キーが右シフトキーの左に1個ある
- 記号ペアがロジカルペアリングである
そしてJISは国家規格です。「JIS規格の内容を基にしてるからJIS配列」としている人もいますが、規格外のものにJISを冠すると製造業の人に埋められます*5。
JIS規格品には2種類あります。
- JIS適合
- 認定機関によって認定されたもの
- JIS準拠
- 自主検査によるもの
キーボードには認定機関はありませんので自主検査によるしかないのですが、JIS X 6002を一通り読んだ限りだと、1. 適用範囲と6. 適用に関する付帯規則により、OADG109AはJIS準拠であるとは考えられませんでした。 JISはキーボードで初めて読んだのですが、雑に解釈した限りだと、規定されていないキーを追加できる場所に強い制限があるようで、スペースキーと同じ行にキーを追加することができないような書き方に見えます。
普及配列は、JISで規格されてる文字数字記号以外のもののほとんどが置き換わってしまっている上に、規定外の箇所にキーが多数追加されているように思います。
この解釈はあくまでも私の感想ですので、気になる人は以下で X6002およびX4064を検索して読んでみてください。 詳しい人に解説していただけるとなおうれしいです。
ということで、極力「JIS配列」という単語を使うことを避けている状態です。 いずれはJIS準拠物理配列のキーボードを出したいなぁという気持ちがあります*6。
〆
タイピングには体が覚えた相対位置が非常に重要であると考えています。 普及配列の相対位置を崩さないようにすることで打鍵体験を維持してかつ親指の役割強化による利点を提案できるのではないかという思いからJP60を提案させていただきます。