国内キーキャップ調達ルート
Q. 「キーキャップ売ってなくない?どこで買えるの?」 A. 「海外通販」
以外のことを話すとなると一記事分くらいになりそうだったので記事にします。
本記事は、メカニカルキーボード用キーキャップの国内調達経路に関してまとめる記事です。
前説明
キーキャップの形状は1種類ではありません。「俺が欲しかったのはこれじゃないんだ...」を防ぐためにキーキャップに関する前説明を書きます。
キーキャップの種類に関して分かってる人は読み飛ばしてください。
価格帯
下は2500円、上は3万円くらいです。
下はamazonで売ってるような「その価格でどうやって利益だしてるの?」な価格のキーキャップ、上はGMKです。
GMKなど高級キーキャップはgeekhackやDrop(旧名:Massdrop)などで「これ買う人がn人以上集まったら作って売るよ」という形式(Group Buy)で販売されることが多いです。基本的に公募が始まったそのときに買わないと二度と手に入りません。r/mechmarketなどの中古市場に流れたときに手に入らなくもないですが、人が欲しいものは大体皆欲しいので中古価格はGroup Buyの時点より基本的に高くなると考えてください。
深淵をみてみたい人はgeekhackやMassdropを覗いてみてください。
他に高級寄りのキーキャップはzFrontierなどでも買えることもあります。Group Buyの仲介(プロキシ)を引き受けて予約販売的に実施されることもありますし、その販売店が主体で生産を行うこともあります。
アジアではzFrontierがプロキシになることが多かったですが、最近では主に権利的に問題がないキーキャップに関しては遊舎工房がプロキシを実施することがあります。
最近はDMMのクリエイターズマーケットに3Dプリントキーキャップが出展されていることがあります。
キーキャップの分類
キーキャップは様々な分類方法があります。 今回はとりあえずここらへん押さえておけばなんとかなるでしょ、な4項目を紹介します。
- プロファイル(形状)
- 印字方法
- 素材
- 対応物理配列
プロファイル
キーキャップは様々なメーカーが研究して独自の形状を作成しています。キーキャップの形状規格(?)をプロファイルといいます。
異なるプロファイルのキーキャップを混ぜて使おうとすると、同じ場所のキーキャップでも高さや傾きが異なるためデコボコして使いにくくなります。プロファイルが同じであれば違うキーキャップセットでも混ぜ込んで使うことができます。ただし、メーカーが違うと型が異なるため、同じプロファイルを名乗っていて写真で見ると同じように見えるけども高さが異なる、ということがあります。
各プロファイルがどう違うかを知りたい人向けに比較画像を作成している人がいます。"keycap profile guide"などで画像検索するとでてきます。 例えば以下です。
行ごとに形状が異なるプロファイル
キーボードの打ちやすさを求めて、「どんなキーキャップ形状にしたら打ちやすいか」が研究されています。 指の曲げ伸ばしの際に先端が円弧を描くことからキーボードの表面がすり鉢状なことが望ましいとされています。 スイッチを3次元的に円弧上に配列する方法*1は高コストなので、行ごとに形状を変えてキーキャップの表面をつかって緩やかな円弧を描く方法が主流です。
代表的なものとしては以下があります。
どれもキーキャップの高さや曲線のつけ方が異なります。異なるプロファイルを混合させると、でこぼこして手触りが悪くなります。
行の区別がないプロファイル
以下の二つは行の区別がありません。 そのためDvorakなど主流であるQWERTYと異なる論理配列を使用したい場合には入れ替えが自由に聞くため都合がよいです。
高さが低く、また、単純にかわいいのでお勧めです。
- DSA
- XDA
また、SAのR3(第三行)がDSAやXDA同様にフラットなのでSA R3だけで全行を作成したキーキャップセットも販売されています。
印字方法
概ね4種類あります。
- 昇華転写(dyesub)
- 2色成型(double-shot)
- レーザー刻印
- シルクスクリーン
このうち、最も高価なのが2色成型です。金型が複数いること、複数色のプラスチックを使うことなど高くなる要因が複数あります。文字色をプラスチックで出しているので、通常の利用で消えることはありません。
次が昇華転写です。プラスチックにインクを染み込ませる含侵印刷という分類の手法です。こちらも指の摩擦程度では消えません。染み込む範囲は表面の1mm未満のみなので、やすりなどで削るとすぐに消えてしまうとは思います。転写時に高温状態で圧力をかけるため、融点が低いABSに対しては行うことが難しく、通常PBTを使います。白インクがないので、下地色に大きく影響をうけます。
レーザー刻印はレーザーでプラスチックの色を変える方法です。プラスチックの素材と刻印の色に制限があります。消えにくいとは思いますが、「すぐ消えた!」という声をSNSやamazonレビュー欄で見かけます。
シルクスクリーンは、文字の形に切ったスクリーンをキーキャップにあてて、インクをこすりつけて定着させるほうほうです。インクがのっているだけなので、強くひっかくなどしてしまうとはがれてしまいます。
素材
大抵以下のいずれかです。
- ABS
- PBT
ABSは表面がつるつるしています。PBTはざらざらしています。
ABSは色の選択肢が非常に多いです。欠点としては指紋が目立ったり、皮脂でてかてかするようになったりするそうです。
PBTは高いです。
昇華転写の場合100%PBTです。これは、昇華転写にABSが耐えられないからです。
食洗器に耐えられるのがPBT, 耐えられないのがABSと覚えてください。
対応物理配列
すごく大雑把にいうとANSI104とそれ以外でした。
キーボードの世界では米の国が幅を利かせているので、米の国の標準が標準です。
オプションとして、ISOやHHKB(英語)の対応があります。日本語配列はISOベースなのでISOが比較的近いのですが、独自拡張が5キーあります。スペースキー付近にキーを増やすレイアウトが日本語配列以外あまりないので、国内メーカー以外で対応していることはほとんどありません。
以下は国内で目にすることがあるであろう配列の例です。いずれも部分的に異なるため互換性がありません。
- 104(ANSI)
- 108(JP)
- ISO
- HHKB
- MINILA
違いを見るために見るべきは以下の3点です。
- 左右Shiftキー
- Enterキー
- 最下行すべて
新しい物理配列
現在はErgodoxやPlanckなど、ANSI104だけでは表現できない新しい物理配列がでてきているため、専用のセットがあります。
特徴としては、CtrlやShiftなどのMODキー含めほとんどすべてが1u(最小単位)サイズです。一部親指キーのために2uや1.5u, 1.25uのキーが用意されていることがあります。既存配列においては2uはテンキーの0くらいしか存在しません。1.5uはtabと、ansiのEnterの上のキーくらいです。
ErgodoxやPlanckなどはレイヤーを使った多層キーマップを前提としているので、レイヤー切り替えキーをしてRAISE、LOWER、ADJUSTなどのキーが用意されていることがあります。
このような新しいレイアウト向けのキーキャップセットはOrtholinearやErgoという名前で販売されていることがあります。キー数が少ない+キーサイズの種類が少ないのでANSI104より安いです。「適当に安いキーキャップでいいや、あ、これ安いからこれにしよ」と買うと全部1uが届いて泣いてしまうかもしれません。
その他、minivanなどの40%や分割スペースなどrow-staggeredな配列だけどいままでのとなんか違うものもあります。これらはbaseセットに加えて拡張キーのセットを買うことで間に合うことが多いです。必要なキーサイズ及び行番号を確認して調達してください。
国内購入先
やっと本題です。
TALP keyboard
最古参です。また、現在一番選択肢が多いです。OrtholinearやErgo、ANSI104にとどまらずDSAやXDA、SA R3の単品売りをしています。キースイッチやpromicroなど部品も販売されています。
最近は突板を使った木目が美しいプレートのキーボードキットを準備しているようです。
ゆかりキーボードファクトリー
Taihaoのキーキャップセットを取り扱っています。また最下段1uキーキャップを取り扱っています。
TaihaoはOEMによく似ていますが、OEMよりも背が高いためOEMと併用すると表面がでこぼこしてしまうようです[要出典]。
遊舎工房
現在最も勢いがあります。GMKやSPなど高級キーキャップを取り扱っている国内唯一のお店です。
現在実店舗のみの取り扱いです。zFrontierなどで取り扱われている高級キーキャップセットの在庫があります。
通販は、実店舗が落ち着いたら追加されるのではないのでしょうか。在庫が目まぐるしい勢いで回っているようです。
【通販】各種キーキャップセットの取り扱いを始めました!https://t.co/BDNsNoGSzE pic.twitter.com/ITgzTqiyVy
— 遊舎工房 (@yushakobo) 2019年3月20日
Filco
国内で非ゲーミングなメカニカルキーボードの選択肢として真っ先に上がってくるだろうFilcoもキーキャップを販売しています。 基本的に直販か、amazon(発送はFilco)で販売されています。
日本語配列が4色程度あります。貴重です。
英語配列はハイプロと銘打った2色成型キーキャップセットがあります。こちらはSA profileで、R2とR3のみから構成されるセットです。
(お待たせしました)
— FILCOキーボード【公式】Majestouch Stingray・MINILA-Rレビュー募集中 (@infoFILCO) 2020年7月20日
行ごとの形状の違いは2種類のみです
こちらの製品がそうなりますhttps://t.co/DhT9LVoSiC pic.twitter.com/TVFa4z9uC1
以下のURLの通り、SAのR3は背が高いDSAといえる形状をしています。 FとJはホーミングキーとして天面の曲面が深くなっていますが、DvorakやColemakなどの配列に入れ替えても、行ごとに形状が異なるOEMやCherry profileに比べて違和感はないに等しいでしょう。
部分交換用のうち、ハイプロかまぼこはSAの1.25u convexと予想されます*2
amazon
国外1
中国で日本amazon出店セミナーなるものが開催されているようで、どんどん出店されています。過去にはamazonで注文しても中国倉庫からの発送*3で、alibabaなどで買うのと大差ないことが多かったのですが現在はamazon倉庫からの発送が多くなっています*4。
国外2
e元素という謎の名前のブランドが注目されているようです。
実物を見たことはないので何とも言えないのですが、種類が豊富で実際安いです。
〆
とりあえず一通りサンプルとして買っちゃいましょう。